事業復活支援金、こんな場合も不正受給に当たります

事業復活支援金不正受給 実務のお話

2022年5月31日が申請期限の事業復活支援金。
税理士として事前確認などの対応を行っていますが、不正受給に当たる恐れのある申請を見かけることもあり、対応に苦慮しています。

特に顧問先の事業者であれば、本当にコロナの影響で売上が下がっているのかどうか、実態が見えてしまいます。
現状私たちの場合は、給付要件に該当しそうに無い場合は丁寧に理由を説明して、申請を諦めてもらっています。

不正受給が疑われる場合、顧問税理士の立場として事前確認を承認することは絶対できませんので、それで不満を持たれて解約につながったとしても、それはそれで結構と思うしかありません。。。

では、どんな場合に不正受給に当たるのか?
具体的に確認していきたいと思います。

コロナが原因の売上減少であることが要件

事業復活支援金は、対象月(2021年11月~2022年3月までのいずれか一つの月)の売上高が、過去3年間のどれかの年の同月に比べて50%以上又は30%以上減少した場合が対象となります。

この売上減少要件については、月々の売上高の変動がそれなりにある事業者の場合、探せば該当する月が見つかることも多いです。

しかし事業復活支援金の受給については、この売上減少がコロナの影響であることが求められています。
ここを都合よく無視していると思われるケースがありますので、事業者のみならず事前確認を行う機関も注意してほしいと思います。

例えば次のような場合は、給付要件を満たさないこととなっています。
・新型コロナウイルス感染症の影響とは関係なく売上が減少している場合
・実際の売上は減少していないのに、繁忙期や出荷時期などの関係で算定上の売上が減少している場合
・売上計上基準の変更又は顧客との取引時期の調整により売上が減少している場合
・要請等に基づかない自主的な休業・営業時間短縮、商材の変更などによる売上減少の場合
・自らの事業判断で売上が減少している場合

判断に迷う具体的事例

本当にコロナの影響を受けて売上が減少しているのかどうかは、事業者本人も顧問税理士も十分わかっていると思います。

例えばその対象月の売上減少の要因が次のような場合、不正受給に当たると考えられます。
・たまたま比較対象の月に大口の売上が立っていたこと
・小規模の不動産仲介、建設業などのように、月ごとの売上の波が非常に大きいこと
・売上入金時期を前後に調整するなどしてその月の売上計上を下げていること
・年払い一括計上などの売上計上基準を調整している又は利用していること
・売上計上基準(発生主義や期中現金主義)を調整していること
・法人と代表者個人、又はグループ会社間の取引を変更・調整していること
※これらが、対象月及び基準月を中心とした売上台帳などから客観的に明らかな場合。

事業復活支援金の申請を行う際は、コロナの影響ではない場合は給付要件を満たさないことを理解している旨の誓約書にサインして提出する必要があります。

不正の自覚がある場合、いさぎよく申請はあきらめるべきですし、顧問税理士もきっちりと指摘は行うべきだと思います。

一方、月ごとの売上の波が大きくても、コロナの影響を受けていて、実際にコロナが原因で売上が減少している事業者もいるでしょう。

コロナ前と比べて明らかに売上が減少傾向にあり、コロナ長期化による売上減少と判断できる場合で、30%以上の売上減少要件に該当する月があれば、給付対象になると判断し、申請しても良いと思います。

問答無用で不正受給に当たるケース

持続化給付金に比べ、少なくとも「事前確定」というステップが追加されたことで、事業実態のない架空の詐欺請求などは、ほとんどブロックされていると思います。

そこまで極端な詐欺事例でなくても、次のような場合は問答無用で不正受給です。
見解の相違などといったレベルではありませんので、絶対にダメです。

・売上隠しを行っている場合
・帳簿をごまかしている場合
・わざと間違った売上台帳を作成している場合
・前項と重複しますが、取引先やグループ会社と共謀している場合

本当に悲しいことですが、関与先の法人で、売上隠しが濃厚な内容で、事業復活支援金の申請サポート依頼がありました。

かなり厳しめに、売上隠しについて問いただしたところ、事業者は実質的に売上隠しを認めたため、事前確認は行わず、税理士契約も解除することになりました。

コロナ関連の給付金は、本当に税理士にとっては頭を悩ませることが多いです。

ネットでも「顧問税理士が事前確認に応じてくれない!なぜ?」
という声を目にすることがあります。

これに対し登録確認機関側からも「事前確認、手間かからないのにね」「顧問なのに対応しないのは理解できない」「何のための顧問?」などと擁護する意見が見られます。

でもこれはめんどくさいから対応しないのではなく、実態はコロナの影響ではないことが分かっているから応じていないだけかもしれません。

何とか前向きなことに力を注いで、快活に活動していきたいですね。

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